SMARTCAMP Engineer Blog

スマートキャンプ株式会社(SMARTCAMP Co., Ltd.)のエンジニアブログです。業務で取り入れた新しい技術や試行錯誤を知見として共有していきます。

2年半で9個の資格を取ったエンジニアの勉強法とおすすめ資格

こんにちは。スマートキャンプでエンジニアをしている井上です。社内ではエースと呼ばれていますが、特にエースらしいことをしたわけではないです。

さて、突然ですが皆さんは資格取得に興味はおありでしょうか。周りに認められたい、資格取得奨励金が欲しい、会社での評価を上げたい、就職や転職に有利になるように、などの理由で資格取得に挑戦された方も多いと思います。しかし最初は資格勉強を始めたものの、なかなかうまくいかないというときもあるのではないでしょうか。

私の前職はSIerでしたが、そこで私はさまざまな資格を取得しました。難しいものから簡単なものまで色々あり、今は合計で9つほど保有しています。

  • 基本情報技術者
  • 応用情報技術者
  • AWS Certified Solutions Architect - Professional
  • AWS Certified SysOps Administrator - Associate
  • AWS Certified Developer - Associate
  • AWS Certified Soluctions Architect - Associate
  • AWS Certified Cloud Practitioner
  • GCP Associate Cloud Engineer
  • TOEIC 935

AWSの資格が半分以上を占めていますね。これらを大体2年半ほどで取得しています。TOEICについて断っておくと、いきなりこの点数を取得したのではなく、大学時代からコツコツ勉強してこの点数です。

何でこんなに取得したのかというと、資格取得奨励金と自己研鑽が理由です。前職だと資格取得に対して奨励金が出るのでそれが欲しかったのと、自己研鑽によって自分の仕事の範囲も広がったり、より良いクオリティで仕事ができると思ったからです。実際にどういうメリットがあったのかは後述させていただきますね。

今日はこれらの資格を取得した実績に基づいて、私の体験を交えつつ、資格取得のメリットや取得のための勉強方法、おすすめの資格などを紹介していきたいと思います。

エンジニアが資格取得するメリット

まず資格取得するメリットとは何でしょうか。ここではエンジニアという視点から見た資格取得のメリットについて私が思うことを語りたいと思います。

業務外の知識がつく

普段業務で触れている知識は、あくまで業務で必要な範囲に限られてきます。取得する資格の内容にもよりますが、資格で勉強する内容は基本的に広範です。例えば「AWS Certified Solution Architect Associate」の資格一つをとっても下記のような範囲を学ぶことになります。

分野 出題の比率
第 1 分野: 弾力性に優れたアーキテクチャの設計 30%
第 2 分野: 高性能アーキテクチャの設計 28%
第 3 分野: セキュアなアプリケーションとアーキテクチャの設計 24%
第 4 分野: コストを最適化したアーキテクチャの設計 18%
合計 100%

試験ガイドから引用。

詳しくは試験ガイドを見てもらえれば良いのですが、各分野にまつわる色々なAWSのサービスを知ることになります。これらの範囲を勉強していくことで、自分の知識の範囲を広げることができ、また普段の業務に対してもその知識を活かして多角的なものの見方ができるようになります。もしかすると今向き合っているシステムは実はベストプラクティスから外れているような実装・運用かもしれません。そうした気づきを得ることができるのも資格取得するメリットと言うことができます。

また資格を取るという目標があることで、一貫した勉強の指針になります。例えば漠然と「AWSの勉強をする」と目標に定めても何から手を付けていいか分からないところがあると思いますが、資格取得という道筋があることで、やるべき勉強や仕入れるべき知識が明確になり、勉強がしやすくなります。

チャンスが広がり、思わぬ仕事が舞い込んでくる

資格は一つの能力の指標です。それが誰にどのように評価されるかはその状況に依存するのですが、チャンスが広がることは確かです。

私自身の体験談として、SNS上で自分の資格情報を載せていたら、とある企業からAWS関係の仕事のお誘いをいただきました。そのオファーを受けて、今では副業としてその仕事をしています。「AWS Certified Solutions Architect - Professional(以下AWS SAP)」の資格やTOEICの点が高いところが評価されたようです。このように持っていると自分の可能性を広げてくれるというメリットもあります。

評価が上がる

企業によっては資格取得を奨励しており、評価の対象としていることがあります。私の前職では自己学習の一環として評価の対象となっていたので、これによって社内での評価を上げることができました。

また資格の価値を知っている人も多かったので、周囲の人からの評価も上がりました。これは特に新卒入社したてのときは有効でした。入りたてのころは周りの人も私の実力を測りかねていたところもあったでしょうから、そういうタイミングで実力の証明となる資格を取ると、私がどれくらいのことを知っているのか知ることができて協業しやすかったのだと思います。

資格取得で特に大切なこと

さて、ここからは実際に資格取得にあたって必要なことや大切なことをお話していきたいと思います。

わからないことをそのままにしないこと

わからないことをそのままにしないことは重要です。答えを聞いてなんとなく分かった気になっているのはほとんどただの暗記と変わらないです。そのままだと応用が利かないので、試験の問題に対応ができないです。わからないときはネットで検索してみましょう。

特にポピュラーな資格だとそれだけネットに出回っている情報も多く、調べると解説記事などがたくさんヒットします。こうした記事などを元に知識を自分の理解に落とし込みます。

こうして得た理解を元に資格勉強をしていくと、自分の理解と矛盾したことが載っている場合などもあったりします。そういうときもすかさず調べてみます。そういった既存の知識との矛盾を敏感に察知できれば凄く良いです。それが今の自分が分かっていないことだからです。

反復すること

一度学習したらそれで終わりでなく、何回も繰り返すことが大事です。特に今までの経験と全く関係のない分野の勉強となると一から知ることになるので特に忘れやすいです。忘却曲線というものを聞いたことがあるでしょうか。人は一時間もすれば半分以上のことを忘れているというやつです。これを信じるかどうかはさておいて、勉強した英単語を、翌日には完璧に忘れてしまっているというような体験は皆さんの実感としてあることだと思います。結局のところ人は忘れる生き物だということで、それを理解して勉強をしなくてはいけません。そのために何度も反復して学習します。

モチベーションを維持すること

資格取得はものによっては1週間程度で取得までできることもありますが、多くは数ヶ月単位での準備が必要になります。そこで難しくなってくるのがモチベーションの維持です。とりわけ難関資格であれば、その学習量の多さに辟易して、「また来年受験しよう」などと引き伸ばしてしまうことが多いです。そういうことを防ぐために、どうモチベーションを維持すれば良いのでしょうか。

モチベを維持するコツ

スモールステップではじめよう

まずスモールステップで勉強をしましょう。すなわちいきなり一足飛びに難しい概念や問題に取り組むのではなく、簡単なところから始めます。そのためにまず基礎的な内容を勉強します。いわゆる座学です。

資格試験は問題集をひたすら解いていれば合格できると宣う人もいますが、それができるのはそもそも基礎的な知識がある人か一握りの天才だけです。いきなり本番で出てくるようなゲキムズの問題に直面して、そしてその答えの解説を見て、どれくらいの人が理解できるでしょうか。答えを聞いても全く理解できず、自分の実力の足りなさ加減にうんざりするのがオチだと思います。まずは基礎的な内容を勉強し、それから問題集に手をつけましょう。そうすることで、答えを聞いて理解できなかったとしても、どこが理解できないかという取っ掛かりぐらいはできるはずです。この取っ掛かりがあることによって、気分が萎えることなく勉強をすすめることができると私は思っています。

できるだけ毎日やる

できるだけ毎日勉強をしましょう。というより、土日にまとめて勉強をする、みたいな勉強方法はやめたほうがいいです。まとめて勉強をするとその期間はかなり集中ができて勉強が進んだ感がありますが、一回にかかる労力が大きいため、次に同じことをやろうとすると腰が重くなりがちです。3時間拘束される勉強と、30分拘束される勉強とどちらが始めやすいか、ということです。ちょっとした空き時間にやりやすいのは後者ですよね。

勉強内容を実際の業務にどう活かすかを想像する

勉強しているときに、それが自分の業務にどうやって活かせそうかを想像しましょう。こうすることで自分の理解が深まり、また実際の現場で活きる知識となります。AWSなどベンダー系の資格は想像しやすいです。私の場合は当時の顧客がオンプレ環境で運用していたので、それをAWSに移行するという文脈で資格勉強中に出てくるAWSのサービスを使う場面を想像していました。身の回りの人物やアプリケーション、DBをそれぞれ当てはめて考えると、具体的なイメージができるので理解がしやすいです。

資格取得戦略

合格基準との知識の差を知る

自分があとどれくらい勉強すれば合格できるのかを知ることで、スケジュールを立てやすくなったり、「まあこれくらい勉強すれば合格できるだろう」という楽観論に逃げず、現実を直視できるようになります。そのためにも試験問題に定期的に手をつけるようにしたほうがいいです。さらにそれを何回もループすることで、自分がどれくらい理解できるようになっているかの指標になりますし、また分からなかったことが理解できるようになっていることでモチベーションにもなります。

スケジュールの立て方

私のスケジュールの立て方を紹介します。

大まかに3つのフェーズで分けます。基礎編、中間編、試験準備編です。それぞれ詳しくは後述の具体的な勉強方法の項目で紹介します。ここでは大まかな概念だけ伝えます。

  • 基礎編
    • 特に問題集は特に使わず、基礎的な内容の理解に努める。
    • 問題は解かずに基礎の理解に務める。先述の通り、いきなり問題集をやってしまうと全く理解できず萎えてしまうから。
  • 中間編
    • 基礎と問題集を解くのを同時並行で進める。例えば平日は基礎内容の理解に努め、休日で問題集を解くなどを行なう。
    • このフェーズは自分との闘い。なぜなら実際の試験問題を問題集などで目の当たりにして「全然分かってないじゃん・・・」と絶望しがちなのと、そこから分からないことを一つずつ理解していくプロセスが待っているから。
    • したがってここが一番長く、苦しい。
  • 試験準備編
    • ひたすら問題集を解く。ここまで来ると基礎的な内容は出来上がっているので、あとは本番に向けて爪を研ぐだけ。わからないところはしっかりと潰していく。

具体的な勉強方法

ここからは私が実際に行った勉強方法を載せていきたいと思います。参考にしてもらえれば幸いです。

AWS資格編

AWSの資格はほとんどUdemyというサービスを使って勉強をしました。ここではSolution Architect Professional取得時の勉強方法を例に上げて説明します。

利用したサービスや教材

私はAWSの資格を英語で受験しています。そのため教材が英語で提供されているものになっています。日本語であれば基礎的な問題はこちらの書籍が良さそうで、模試をする場合はこちらのUdemyコースが良さそうに思えました。

全くの余談になりますが、ある程度英語ができる方は、AWSの資格試験を英語で受験することをおすすめします。英語で受験することによって日本語訳に惑わされなくて済むからです。さすがに試験問題なのでありえないような翻訳はないものの、訳され方によっては分かりづらいときがあります。英語の勉強にもなるし一石二鳥と思える人は英語でチャレンジしてみてもいいのではないでしょうか。その場合は上記のUdemyコースがおすすめです。2つともボリュームがそれなりにありますが、それぞれ分かりやすく解説されています。

スケジュール

およそ半年程度の時間をかけて勉強しました。これについてはもっと短くても良かったと思います。理由は後述します。

  • 最初の1〜2ヶ月(基礎編)
    • Udemyの基礎講座をひたすら閲覧して勉強
      • 自分に足りなさそうな分野(オンプレからの移行など)を重点的に勉強
  • 中間の2〜3ヶ月(中間編)
    • Udemyの基礎講座をペースを落として閲覧
      • 最初の1〜2ヶ月でカバーしていなかったところを勉強
    • Udemyの問題集を解いていく
      • 毎日5〜6問程度。ただし分からないところはしっかり調べるのでそれなりに時間がかかる
  • 最後の1〜2ヶ月(試験準備編)
    • Udemyの問題集を解いていく
      • ここまで来ると2,3周はできているので、自分が理解しているかどうかの確認がメイン

かなり長いスパンで勉強していたので、毎日1時間も勉強はしていませんし、最初の頃は普通にサボっていたときもあります。期間がカツカツだったら毎日しっかりやっていたと思います。

このスケジュールで勉強したところ、合格点が750点のところ942点を取得して合格できました。正直なところちょっと勉強しすぎたところもあるかと思います。ネットを見ていると2週間の勉強で受かっている人もいるので、本当はもっと短い期間でも受かるように思います。

ちなみにAWSの試験は自宅受験ができます。控えめにいってこれはものすごく良いです。わざわざ遠いところまで出かけなくていいし、何より自宅という誰にも邪魔されない環境で受験ができます(このあたりは家庭の事情があるかもしれませんが)。

IPA資格編

IPAの資格としては基本情報技術者と応用情報技術者を私は持っていますが、こちらについての勉強方法も紹介します。2つとも似たような勉強をしましたが、今回は応用情報技術者の資格取得の勉強方法を紹介します。

利用したサービスや教材

書籍の値段はそれなりにしますが、体系立てて分かりやすく説明してあるのでおすすめです。ドットコムさんはIPA試験を受ける人は誰でも知っているサイトですね。午前問題は各設問ごとにしっかりと解説がついているので大変勉強がしやすいです。また自分のアカウントを作れば自分がどれくらい勉強をしたか履歴として見ることができ、モチベーションに繋がります。

スケジュール

こちらはAWSとそこまで変わりません。基本的には基本を勉強してから問題集を解いていくという感じです。

午後試験は選択問題があるので、そこをどうするかが戦略の鍵となります。試験に出た問題を見て、簡単そうなものを選ぶことができるように、勉強範囲を広くとって準備をするという方法もあります。しかし私はあらかじめどのような問題が出るかを見ておいて、自分が解けそうでかつ勉強したいと思う分野の問題を選び、そこに限定して学習をしました。すなわち他の分野は一切学習しないので本番で難しい問題が出ても立ち向かうしかありません。しかしその分迷いを断ち切ることができ、試験中どの問題を選択するか悩まなくて良かったり、勉強範囲も限定できるという利点もあります。この方法がフィットするかは人それぞれです。自分の場合はどんな方法が良いか慎重に検討しましょう。

  • 最初の1〜2ヶ月(基礎編)
    • 「キタミ式イラストIT塾 応用情報技術者」で基本的なところをざっと理解する
      • 一通り読む
    • ドットコムで午前問題を解く
      • 一日20問程度のペース
  • 中間の2〜3ヶ月(中間編)
    • 「応用情報技術者 午後問題の重点対策」で過去問を解いていく
      • 一日1〜2問で、休日は2〜3問程度
    • ドットコムで午前問題を解く
      • 一日20問程度のペース
  • 最後の1〜2ヶ月(試験準備編)
    • 「応用情報技術者 午後問題の重点対策」で過去問を解いていく
      • 一日2〜3問で、休日は3〜4問程度
    • ドットコムで午前問題を解く
      • 一日20問程度のペース

試験日が近づいてきてもそこまで勉強量を増やしていないのがわかります。準備期間を長く取っていたので、無理な勉強をしていた記憶はないです。

結果としては、午前が90点ちょっと、午後が60点ちょっとといったところで、午後がかなり危なかったです。今思うと、勉強が午前問題に偏りすぎていたきらいがあります。ドットコムさんの過去問道場は使い勝手がよく、出勤中など 空いた時間にさくっと勉強できるので、暇があったら過去問道場を開いていた記憶があります。

おすすめの資格

最後におすすめの資格を紹介します。

AWS Certified Solutions Architect - Professional

AWS SAPは取得が難しいだけあって得られる評価も大きいです。実際、前職でも評価されました。しかしSAPで学ぶ範囲はかなり広いのですが、その分実際の業務では活かしようのないものもあります。例えば移行の分野はそれを専門にしている事業を持つ企業なら有用ですが、そうでない場合は活用の余地があまりなかったりします。とはいえAWSのことを全般的に学ぶことができるので、AWSを用いている企業に所属しているなら学んでみて損はありません。

AWS Certified Developer - Associate

Developerはアプリケーションエンジニアにおすすめです。LambdaやAPI Gateway、DynamoDBなどAWSを用いて開発するうえで知っておきたいサービスがメインです。さらにCodePipelineなどを用いたCI/CD環境の構築についても学ぶことができます。私が取った資格の中で一番実務に直結したのがこれでした。当時はLambdaやDynamoDBを使ってWebシステムを開発していたので、勉強すればするほど周辺技術の理解がクリアになりました。この資格の良いところは、上位資格であるDevOpsと違って開発者向きの学習分野で固められている点です。運用面の話があまり出てこないので、アプリケーションエンジニアにとって学びやすい資格になっています。

応用情報技術者

IPA系資格はSI系のエンジニアにおすすめです。SIerは私の観測する限り、基本的に資格に対しては何らかの支援をしていることが多いです。なかでもIPA資格は今も昔もIT系でポピュラーな資格なので、まず間違いなく資格取得支援の対象となっています。昇給、昇格の条件に据えている企業もあるようです。私の前職もSIerでしたが、昇給・昇格の条件とまではいかないまでも、資格取得奨励金の対象にはなっていました。こういう環境であれば、資格取得の価値(その資格がどれくらいの勉強をしないと取れないか)を認識している人が周りに多くいるため、それだけ評価されやすいということです。

TOEIC

最後にTOEICですが、これは英語そのものの勉強という話になります。やはりエンジニアは英語できると色々と重宝されます。詳しく語りだすとキリがないのですが、例えば海外の記事から情報を得ることができたり、転職についても可能性が広がったりします。私の場合は、今の副業先が海外の企業なので英語を活用しつつ働いています。スマートキャンプ内でも英語活用の機会はあり、最近では海外の教授と打ち合わせをしたりしました(が、大した話はしていないので次回に期待しています)。一つの勉強の指針という意味でTOEIC受験をしてみるのも良いと思います。

まとめ

いかがだったでしょうか。人によって資格取得のモチベーションは違いますが、前述したように、資格取得をすることによってチャンスが広がったり、思わぬところから仕事の依頼が舞い込んできたりします。自分の可能性を広げるという意味で資格取得にチャレンジしてみてもいいのではないでしょうか。