SMARTCAMP Engineer Blog

スマートキャンプ株式会社(SMARTCAMP Co., Ltd.)のエンジニアブログです。業務で取り入れた新しい技術や試行錯誤を知見として共有していきます。

YWTで振り返るエンジニアリングマネージャーになってからの1年間

こんにちは。スマートキャンプでエンジニアリングマネージャーをしている米元です。

本記事は

の8日目の記事です。

昨年の10月に私が開発チームのマネージャーになってから1年と1ヶ月が経ちました。

今回はこの約1年間をYWT形式で振り返っていこうと思います。

Y: やったこと

チーム分け

マネージャーになってから最初にしたことが開発チームのサブチーム化でした。

スマートキャンプではもともと1つの開発チームで主力事業のBOXIL(ボクシル)を開発・運用をしていたのですが、2018年の途中から新規事業の立上げに伴って各エンジニアが複数のプロダクトを持つような体制になり、責任範囲が曖昧になったりタスクのスイッチングコストがかかって非効率な状態になるなど、いくつかの問題が発生していました。

それらの問題を解消するためにプロダクト毎にチームを分け、メンバーはそれぞれのプロダクトにコミットする体制に徐々に移行していきました。

一方でチーム分けすることによりチーム間のコミュニケーションや情報共有が足りなくなる事も予想されたため、採用活動や勉強会などは全体で行うように横軸での連携も意識していました。

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全社会議で開発チームを分ける理由の説明をした際のスライド

※余談ですが当時から「One Team」という言葉を先取りして使っていました

チームビルディング

1on1

マネージャーになってから毎週全メンバーとの1on1を始めました。 もともと会社の制度として隔週で30分の1on1をすることになっていましたが、

  • それまでも他のメンバーと仲は良かったものの、改めてメンバーの事を深く知るための時間を取りたかった
  • 課題が小さいうちにキャッチアップするには隔週だと間が長過ぎる

ことなどから毎週30分、日によっては1時間以上の時間をかけて話すようにしました。

話す内容は

  • 雑談
  • 心身の調子
  • 困っている事
  • 私がサポート出来ることがあるか

などを中心として、私は質問のみを行いなるべくメンバーに話をしてもらうように心がけました。 また、会話の中で課題の発見と解決をメンバー自身が行い、成長を促すための支援をすることを意識していました。

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1on1についての社内LT資料

今年の4月以降はチームリーダーになったメンバーに他のメンバーの1on1をお願いし、私自身は主にチームリーダーとの1on1を行っています。

最近のワイ

チームを分けたことや新メンバーが入社して人数が増えたこともあり、今年に入ってから「誰が何をやっているのか、何を考えているのかわからない」という声を聞くことが多くなってきました。

情報共有の目的で隔週で開発チーム全体の会議を行っていたので、その中で各自が最近やっていること等をLT形式で発表するようにしました。

当時の議事録

- 各自の最近の業務を話す
- 1人3分くらい
- フォーマット
    - 1,2スライドくらいのボリューム
    - YHWT法
        - Y: やったこと(こなしたタスク)
        - H: ハマったこと、失敗したこと(何かあれば)
        - W: わかったこと(学んだこと何かあれば)
        - T: つぎにやること(予定)
- 3人ずつくらい
- 発表後、esaのこのページにUPする

内容としては上記のようにYWTにH:ハマったことを追加してYHWTとしましたが、語呂が悪いので「最近のワイ(Y)」と名付けて運用しています。

始める前はうまく回るか分からなかったのですが、いざ始めてみると人によって自分の想いを熱く語ってくれたり悩みや将来やりたいことを話してくれたりと、1人5〜10分程度のかなりエモい内容のLTになりました。

意外とみんな自分が考えていることを話す場が欲しがっているのだなと思いました。自分自身も毎回楽しみにしているコンテンツです。

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最近のワイについて社内で共有した時のスライド

チーム文化作り

開発チームで大事にする「文化の言語化」を最近始めました。

スマートキャンプの開発チームは基本的には非常に仲が良いものの、この1年で少しずつ人数が増えてきたことでチーム毎に文化や雰囲気の違いが出てきていたり、コミュニケーションや行動の取り方でメンバー同士がぶつかることが何度かありました。

また、弊社ではSOCS(SmartThinking, Ownership, Collaboration, Speed)という行動指針がありますが、前述した課題の部分がカバーしにくい内容であるため、SOCSに加えてもう少し開発寄りの指針が欲しいと思うようになっていました。

特にこれから更に組織が大きくなっていくことを考えるとスマートキャンプのエンジニアとして大事にすることは何かを言語化し、どんな行動が良くてどんな行動が悪いかの基準を作りたいと考えました。

いきなりゼロから考えるのも大変な事でしかも浸透しづらいため、現在チームで取組んでいる「スクラム」に定義されている5つの価値基準を開発チームの基準とすることにしました。

今後は弊社の行動指針であるSOCSや「Team Geek」で有名な「HRT」などをうまく取り入れながらスマートキャンプの開発チームらしい文化を作っていきたいと思っています。

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毎週金曜日にSlack Botが価値基準での振り返りを促します

PR

今年に入ってから社外へのアウトプットを増やすことにも力を入れています。

開発チームの社外へのプレゼンスを高めることで会社としては採用活動の際に候補者に訴求しやすくなりますし、各メンバーも個人での登壇を増やしたりブログ記事の執筆をすることでスキルと市場価値を高めることができます。

いくつか取組んでいることがありますが、その中でも後述するエンジニアイベントやエンジニアブログはメンバーのおかげで順調に成果が出ています。

また、最近はイベントのスポンサーを行ったり、島根県主催のRuby biz グランプリに応募し「WEB+DB PRESS」に掲載して頂くなど積極的に社外へのPR活動を行っています。

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BOXILとBiscuetが掲載されたWEB+DB PRESS

育休をとった

マネージャーになって3ヶ月後、今年の1月に育児休業を取得しました。

育休をとることはマネージャーになる前から決めていたものの、マネージャーに成り立てでチーム作りがこれからというタイミングでの育休取得には正直迷いはありました。

詳しくは以下の記事に書いていますが、生まれた直後の時期に子供と一緒に過ごせた事は本当に貴重な体験で、結果として育休を取ってよかったと思っています。

tech.smartcamp.co.jp

不在の間カバーしていただいたメンバーや会社の方々、改めてありがとうございました。 また、今後育休をとるメンバーには全力でサポートしたいと思います。

開発リーダーの引継ぎ

マネージャーになった当時は現在の「Biscuet」の前身となる新規プロダクトの開発リーダーを兼務していました。

しかし新規プロダクトの立上げもマネジメントもどちらも片手間でやるのは難しく、また育休の件や採用活動に力を入れていく事も考えてプロダクトにコミットできるメンバーに開発リーダーを引き継ぎました。 引き継いだメンバーは現在は「Biscuet」のPdMとして活躍してくれています。

私自身はもともとはプロダクト作りをしたいと思ってスマートキャンプに入社したこともあり、個人的には難しい決断でしたが、自分があのままリーダーをしていても組織もプロダクトもうまく回っていなかったと思いますし、引き継いだメンバーが自分よりも上手く回してくれているので、あのタイミングで引き継いだことは正解だったと思っています。

tech.smartcamp.co.jp

ビジネス職の新卒へのエンジニア研修

5月の連休明けにHRからの依頼で、札幌オフィスにてビジネス職の新卒メンバーへエンジニア研修をしました。 目的はエンジニアと一緒に働く際に必要な知識をつけてもらうことで、内容としてはエンジニアの業務内容・考え方・働き方などを話したり、プログラミング体験や設計体験でした。

エンジニアの仕事は自分達が思っている以上に他の職種の人からは理解しづらいものですが、一緒に手を動かしてもらうことで仕事内容や一緒に働くイメージがついたのではないかと思います。 tech.smartcamp.co.jp

採用

エンジニア採用の立て直し、採用活動全体の再構築

マネージャーになってから最初にした事の1つとして採用活動の再開があります。

スマートキャンプでは以前からエンジニア採用はエンジニアが中心で行っていたものの、2018年10月当時はエンジニア採用に責任を持って動かせる人間がいない状態だったため、私が中心となって改めて採用活動を再開することになりました。

私自身はそれまで面接官の経験はあったものの採用活動全体の戦略立てやフロー設計などは経験が無く、手探りでのスタートとなりました。 立て直しを図るべく採用系サービスの開拓や既存で運用していた採用サービス担当者の方々との打合せ等を行っていきましたが、最初の半年間は全く結果が出ず、採用の難しさを思い知らされました。

今年の5月あたりから採用にフルコミットして、フローの整備をしたり会社やチームを巻き込んだ採用活動を行えるようになった結果、最近になってようやく成果が出るようになってきました。

B2B領域での採用活動の難しさ、コミットメントについて話した資料 speakerdeck.com

現在の採用フローについて tech.smartcamp.co.jp

新卒採用の開始

21卒を対象に新卒エンジニアの採用も開始しました。 まだ始めたばかりですが

  • 業務経験が少ない学生のポテンシャルを見極める事
  • 学生に対しての知名度が無いところからの訴求
  • 学生にとってイメージしにくいB2B SaaS業界の説明方法

など、中途採用とは違った難しさを既に感じていますが、何名かの優秀な方々にも出会えており今後が非常に楽しみです!

技術顧問

スマートキャンプでは以前から外部の優秀な方々にアドバイザーとして入って頂いているのですが、11月から新たに庄司嘉織さんに技術顧問として就任して頂きました。

まだ着任して頂いてから1ヶ月ほどですが、技術的な部分はもちろん組織文化作りや採用についても良いアドバイスを頂いたり私やメンバーの壁打ち相手にもなって頂いたりと既に非常に助けられています。

www.wantedly.com

EM系のイベントに参加

EOF2019 (Engineering Organization Festival 2019) をはじめとしていくつかのEM系のイベントに参加しました。

自分がマネージャーになったタイミングでEM界隈が盛り上がってきて、色んな方々のノウハウが世の中に出てきているのが本当にありがたいです。

この日は風邪をひいて声が出ず、他の参加者との交流がほとんど出来なかった事が悔やまれます。 今後はもっと外部のEMの方とのつながりを増やしていこうと思います。

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twadaさんの発表

メンバーがやってくれたこと

メンバーが自主的に企画・運営してくれていることも紹介したいと思います。

エンジニアブログ

今年の1月から開始したこのエンジニアブログ。

開始当時で9名と少ない人数であったことや通常業務もかなり忙しい状態だったため、当初は運営が回るかどうかが不安でした。

ただ始めてみるとブログ運営メンバーが率先して記事を書いたり、スケジューリングや他のメンバーの記事を書くことをサポートするなどしてくれたおかげで、毎週途切れることなく記事を出すことができ、いくつかバズる記事も出るようになりました。

最近では以下の記事で数あるTechブログの中で4位(!)にランクインしたりと、想像以上の成果が出ています。

note.com

開発合宿

昨年から年一回の頻度で実施している開発合宿。

今年は熱海で2泊3日の合宿を行い、3チームに分かれて3つのプロダクトを開発しました。

作ったプロダクトや合宿の様子については以下をご覧ください。 tech.smartcamp.co.jp tech.smartcamp.co.jp tech.smartcamp.co.jp

始めて使う技術を利用しての開発は純粋に楽しいですし、普段と違ったメンバーで開発することで技術面でも性格面でも改めてお互いを知る良い機会になりました。

また、開発プロセスがこなれてきたせいか成果物も実際にプロダクトとして価値があるものが多く、昨年に比べて企画からプロダクトを作る力が上がっているように感じました。

アジャイルコーチ

メンバーの紹介で7月からアジャイルコーチの天野さんに参画していただき、スクラムの導入を進めています。

実際のプロセスは以下の記事をご覧頂きたいのですが、それまでの「なんちゃってアジャイル」から本格的なスクラムに移行し、開発における不確実性を減らせる状態に徐々になってきています。

tech.smartcamp.co.jp tech.smartcamp.co.jp

イベントの開催

B2B SaaS領域のエンジニアリングに関する情報共有やそのコミュニティ形成と、スマートキャンプエンジニアの社外へのPR活動を兼ねて「B2B SaaSエンジニアMeetup - SharingIssues」というイベントを開催しました。

これまで10/29と12/6の2回開催しましたがいずれも盛況に終わり、この領域でのエンジニアリングの課題意識の高さとMeetupの需要の高さを感じました。

第一回のイベントレポート tech.smartcamp.co.jp www.findcareers.jp

また、運営のサポートをして頂いた他部署の方々、LT登壇依頼に快く応じて頂いた社外の登壇者の方々、共同開催して頂いた会社様など、多くの方に協力して頂いており、自分たちだけの力ではここまでうまく出来なかったと感じています。本当にありがたいです。 来年以降も継続して開催し、B2B SaaSの課題を共有していくコミュニティとして大きく育てて業界を盛り上げていきたいです。

W: 分かったこと

「Y:やったこと」が、かなり長くなってしまいました。 他にも書きたいことはあるのですが一旦この辺でまとめようと思います。

マネジメントは面白い

振り返ってみて感じたことはチームのメンバーや周囲の方々に助けられた事が多く、自分自身の成果だと思える事はそれほど無いということです。

この1年で改めて学んだ事としては

自分1人で頑張っても大したことは出来ないが、チームが一体となって課題に取り組めた時には想像以上の成果が出せる

ということです。

自分自身が精一杯コミットする事はもちろんですが、

  • 自分だけでなくメンバーがいかにモチベーション高く自主的に動ける環境を作れるか
  • マネージャーとしていかにその事にコミット出来るか

が最終的な成果の大きさに比例するということを身をもって学びました。

マネジメント自体は成果が出るまでに時間がかかる事が多く、さらに曖昧で不確実性の高い問題に取り組む必要があるため、精神的には辛い時期もありました。

ただチームで取組んだことに対して自分の想像を超えた成果が出た時に皆で喜べることが自分自身のやりがいにもなり、マネジメントの面白みを感じられた1年でした。

私自身は至らない部分も多くありますが、そこを埋めてくれるOwnershipのある優秀なメンバーと一緒に働けていることに感謝しています。

T: 次にやること

来年以降にかけてはEMとして以下の事に取組んでいくつもりです。

組織

  • 組織文化の言語化と定着
  • 採用とそれに合わせたチーム体制の再構築
  • 自己組織化したチーム作り

技術

  • インフラ・アプリケーションアーキテクチャの改善
  • メンバーの技術力の向上
  • 登壇や記事執筆など社外へのプレゼンスを高める取組み

個人

これらを踏まえて、自分自身のチャレンジとしては

  • 組織・技術基盤の両方のスケーラビリティとケイパビリティを高める
  • 上記を達成するために自分自身の技術スキル・マネジメントスキルを高める

になりそうです。

まとめ

繰り返しになりますが、記事を書いてみて改めて多くの方々にサポートして頂いた1年だったなと思いました。

来年はチームとしても組織としても更に飛躍の年になると思うので、今からワクワクしています!

次回のスマートキャンプ Advent Calendarは師匠こと井上の記事です!お楽しみに! qiita.com

Engineering Manager vol.2 Advent Calendar 2019はこちら qiita.com